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Apple は、’Plateau’ を肯定的に捉えている

※9月21日: ご指摘を受け、誤りを修正いたしました

そもそも Plateau とは何か


今回登場した iPhone 17 Pro と iPhone Air の背面には、特徴的な ‘Plateau’ がある。(追記: iPhone 12以降からPlateauという用語は存在していたが、いわゆる一般ユーザ向けに使われるようになったのは今回が初めて。)

‘Plateau’ は、日本語話者にはあまり聞き馴染みのない単語な気もするが、辞書では「高原」や「台地」と定義されている。

Apple Japan は、これを「台座」や「凸部」と翻訳し、紹介している。

引用: iPhone 17 Pro、登場 | Apple
引用: iPhone Air、登場 | Apple

iPhone 17 Pro の ‘Plateau’ は「台座」、iPhone Air の ‘Plateau’ は「凸部」と、意図的に言い分けているのか、それともただの日本語での表記揺れなのかは分からない(英語ではどちらも ‘Plateau’ )。

しかし確実に言えることは、一般的にはいわゆる ‘Camera bump’ (カメラバンプ)と呼ばれていたこの部分に、Apple はわざわざ ‘Plateau’ という独自の名称を、一般向けである製品紹介のビデオで明言していることである。

iPhone X 登場時との違い


今回の ‘Plateau’ 、インターネット上ではこのデザインを肯定する意見もあれば、否定する意見も見られる。

このような賛否両論あるデザインといえば、2017年に登場した iPhone X のいわゆる ‘Notch’(ノッチ) を思い出す人もいるかもしれない。

引用: iPhone X のフロントスクリーン

ほとんどの人が ‘Notch’ と呼称しているこの上部、実は Apple がこれを ‘Notch’ と呼んだことは一度もない。

Apple Event や Apple Newsroom において、いわゆる ‘Notch’ 部分について言及がなされるときには、 ‘TrueDepth camera system’ が用いられているが、Apple Developer のサイトでは ‘Sensor housing’ が使われている。

しかし厳密に言えば、’TrueDepth camera system’ が指すのは Face ID に必要なセンサーたちのことであり、一般的に ‘Notch’ と呼ばれているこの部分を指す用語としては適切ではないように思う。

そして、 ‘Sensor housing’ が指すのは TrueDepth camera を収めている周囲から飛び出た黒い部分( ≒ Notch )と解釈できるかもしれないが、Dynamic Island も TrueDepth camera system を収めていることを考えると、 ‘Sensor housing’ もまた Apple による ‘Notch’ の正式名称とするのには、少し無理があるかもしれない。

上に述べたことを要約するならば、「Apple はいわゆる ‘Notch’ 部分に対して正式な名称を定めていない」となる。

Apple の捉え方


‘Notch’ という言葉が一般に用いられるとき、それはあのデザインを否定的に捉えている場合がほとんどであるように思う。このため、 ‘Notch’ という言葉を Apple が公式に用いてしまえば、’Notch’ のデザインが否定的に捉えられていること、そして自らもそう捉えていることを公に認めてしまうことに繋がりかねない。

こうした背景から、’Notch’ という言葉について回るマイナスのイメージからの脱却を意図して、最終的に Apple は Dynamic Island という新しいデザインと名称を考え出すに至ったと筆者は思う。

さて、’Plateau’ に話を戻そう。今回 Apple がより広がった Plateau のデザインを導入するに至った経緯は、Notch の時と同じく、「技術的な制約があったから」であるように思う。

特に iPhone Air では、「薄い筐体」と「長いバッテリー持続時間」という一見すると不可能にも思える2つを両立させるための解決策として、 ‘Plateau’ 部分にバッテリー以外の多くの部品を収めた。

引用: iPhone Air の Plateau

このように、Notch と Plateau は、導入されるに至った経緯は似ていても、Apple によって正式な名称が与えられ、その名前が Apple によって積極的に使われているかどうかという点では、非常に大きな差があると言える。これが何を意味するか…

それはつまり、Apple がかつて Notch を Dynamic Island で置き換えたときのように、 「今回の大きくなった Plateau のデザインから、以前のiPhone 16 Proまでのような出っ張りの少ないデザインに戻す」ことは、今のところ Apple は考えていないということである。少なくともチップの発熱軽減や、バッテリーが容量比で大幅に小さくできるなどの大きな技術的進歩がない限り、この 大きくなったPlateau のデザインは継続採用されると言える。

そして、この上部の出っ張りが今までのように ‘Camera bump’ と世間から揶揄されることをなるべく避け、ある種の技術的到達点として世間に捉えられることを、Apple は ‘Plateau’ の言葉に込めたと筆者は考えている。

Karagana